研究内容

太陽電池色素

“Synthesis and Photovoltaic Properties of Boron β-Ketoiminate Dyes Forming A Linear Donor-π-Acceptor Structure”
Y. Moriya, F. Yumioka, T. Funaki, and K. Ono
Chem. Asian J.  coming soon. Link

色素増感太陽電池の受光層は、「ひまわり畑」のイメージとして見ることができます。酸化チタン電極を覆う色素増感剤がひまわりであり、それが太陽光を吸収します。Front Coverに採用された絵はその様子を描写しています。本論文では、直線形のβ-ケトイミネートホウ素色素を合成して色素増感太陽電池に使用しました。この外部量子効率(IPCE)測定で最大変換効率が80%に達し、屈曲した構造をもつβ-ジケトネートホウ素色素の場合よりも効率が大幅に改善しました。本研究は有機ホウ素化合物による新たな色素増感剤を提案するものであり、今後、実用化研究への発展が期待されます。なお、本研究は産業技術総合研究所の舩木敬博士との共同研究によるものです。

A sunflower field is often seen as an image of the active layer of dye‐sensitized solar cells (DSCs). Dye sensitizers that cover titanium oxide electrodes absorb sunlight. In this study, linear dyes containing boron β‐ketoiminate were synthesized and applied to DSCs. Their maximum incident photon‐to‐current conversion efficiencies reached 80% and were higher than those of DSCs using boron β‐diketonate dyes with a bent molecular structure. The photovoltaic characteristics revealed the effective process of light absorption–excitation–electron injection. More information can be found in the Full Paper by Katsuhiko Ono et al.

ホウ素錯体の反応利用

“Difluoroboron Chelation to Quinacridonequinone: A Synthetic Method for Air-Sensitive 6,13-Dihydroxyquinacridone via Boron Complexes”
K. Moriya, R. Shimada, and K. Ono
Chem. Asian J. 2019, 14, 1452–1456. Link

キナクリドン類は鮮明な色と耐久性を兼ね備えた高性能の赤色合成顔料であり,自動車の塗装・印刷インキ・プラスチックの着色などに用いられている.近年では,太陽電池・有機EL材料などの有機エレクトロニクス分野に向けて活発に研究が行われている.一方,当研究室ではホウ素錯体を用いて有機機能性材料の研究開発を行っている.本研究では新たな合成顔料を開発する目的でキナクリドンキノン(QQ)へのホウ素錯体(BF2)導入反応を調査した.その結果、生成した濃緑色物質は当初予想したQQ-BF2ではなく,それが2電子還元された6,13−ジヒドロキシキナクリドン(QA-OH)のBF2錯体(QA-BF2)であることを発見した.実は、2電子がどこから注入されたか現在解明中である.Cover Pictureの「From Where?」はそれを指しています.また、QA-BF2の加水分解によって濃紺色のQA-OHが生成し,さらに空気酸化によって黄色のQQが再生した.これにより,ホウ素錯体を介してQQからQA-OHに変換する新しい合成経路の開発に成功した.本研究成果は,新規顔料だけでなく還元剤や酸素センサーの開発へ応用が期待される.なお,本論文はChemistry – An Asian Journal誌2019年9巻14号のCover Feature(Link)に採用された.

多機能性ホウ素色素

“Multifunctional organic dyes: anion-sensing and light-harvesting properties of curcumin boron complexes”
M. Tsuchikawa, A. Takao, T. Funaki, H. Sugihara, and K. Ono
RSC Adv. 2017, 7, 36612-36616. Link

モバイル端末に搭載するデバイスとして有機物質を使った太陽電池が注目されており、色素増感太陽電池はその中の一つである.これは,その名のように色素が太陽光を吸収して電流へ変換することにより作動する.これをモバイル端末として身に着ける技術(ウェアラブルテクノロジー)へ応用するには,人間や環境にとってやさしい材料の開発が重要になる.天然色素はこの候補であるが,単独使用では十分な性能は得られていない.本研究ではウコンなどに含まれるクルクミンに着目し,これをホウ素で機能化した新規色素を開発した.その結果,この色素は天然色素を大幅に超える太陽電池性能を示した.
一方,クルクミンはポリフェノール類の一種であるため,フェノール部分が外的刺激を受けることで色変化を示した.例えば,純水を添加しても色変化は起こらないが,ミネラルウオーターでは含有イオン量により色変化(赤→青)が観測された.
これらの色素機能の組み合わせは,医療用端末などへの応用を期待させる.また,ホウ素による機能化は天然色素の材料応用にとって有効な手法になることが明らかになった.

太陽電池色素

“(Dibenzoylmethanato)boron Difluoride Derivatives Containing Triphenylamine Moieties: A New Type of Electron-Donor/π-Acceptor System for Dye-Sensitized Solar Cells”
Y. Mizuno, Y. Yisilamu, T. Yamaguchi, M. Tomura, T. Funaki, H. Sugihara, and K. Ono
Chem.-Eur. J. 2014, 20, 13286-13295. Link

TOC2

自然エネルギーへの転換が求められる中で色素増感太陽電池が注目されている.このデバイスにおいて増感色素の研究開発は重要な要素技術であり,その研究開発が活発に行われている.本研究では,新規色素のクロモフォア (発色団)として有機ホウ素錯体に注目し,これを骨格にもつ太陽電池色素(上図)を開発した.その結果、この色素で良好な太陽電池特性が観測されたことから,ホウ素錯体をクロモフォアとする色素設計の有効性が実証された.課題はあるものの,今後の研究でポルフィリン系やオリゴチオフェン系に匹敵するものになることが期待される.このように,有機ホウ素化合物による産業応用へ夢が膨らむ結果を得た.

有機半導体

“Synthesis and Properties of Terthiophene and Bithiophene Derivatives Functionalized by BF2 Chelation: A New Type of Electron Acceptor Based on Quadrupolar Structures”
K. Ono, A. Nakashima, Y. Tsuji, T. Kinoshita, M. Tomura, J. Nishida, and Y. Yamashita
Chem.-Eur. J. 2010, 16, 13539-13546. Link

TOC1

ターチオフェンやビチオフェンの両端にBF2キレートをもつ化合物を合成した(上図)これらの分子では、キレート効果に基づく四極子構造の寄与が強くオリゴチオフェン上に正電荷が非局在化するこうした構造を反映して強力な電子アクセプタ性が観測されたこれらを有機電界効果トランジスタの半導体層に使用したところ良好なn型特性が観測された有機π電子系の機能化においてホウ素元素の有効性と発展性を報告した.

太陽電池色素

“Structure and Photovoltaic Properties of (E)-2-Cyano-3-[4-(diphenylamino)phenyl]acrylic Acid Substituted by tert-Butyl Groups”
K. Ono, T. Yamaguchi, and M. Tomura
Chem. Lett. 2010, 39, 864-866.
Link

ono

トリフェニルアミン色素にtert-ブチル基を導入し,立体保護基が増感色素に与える影響を調査した.この保護基の導入によりカチオンラジカル状態が安定化した.また、X線結晶構造解析で分子配列を調べた結果,色素骨格の会合が阻害されていた.このため,色素増感太陽電池の効率は約1.3倍に上昇した.色素が備えているパフォーマンスを引き出すうえで立体保護基の効果は今後の研究開発に有効な知見である.

有機半導体

“Synthesis, Crystal Structure, and Electron-Accepting Property of the BF2 Complex of a Dihydroxydione with a Perfluorotetracene Skeleton”
K. Ono, J. Hashizume, H. Yamaguchi, M. Tomura, J. Nishida and Y. Yamashita
Org. Lett. 2009, 11, 4326-4329. Link

Abstract

先にOrganic Lettersで発表ししたテトラセンBF2錯体について,それにフッ素基を導入して電子受容性と電子移動度の向上を調査した.BF2基によるキレート効果に加えて,フッ素基の電子求引効果が働くことで電子アクセプタ性がさらに向上した.また、X線結晶構造解析においてF…πおよびF…F接触が観察され,固体状態で分子間に強い相互作用が形成された.これらの結果,有機電界効果トランジスタ(OFET)で電子注入効率と電子輸送性が向上し,良好なn型半導体特性が観測された.

超分子ナノチューブ

A Linear Chain of Water Molecules Accommodated in a Macrocyclic Nanotube Channel”
K. Ono, K. Tsukamoto, R. Hosokawa, M. Kato, M. Suganuma, M. Tomura, K. Sako, K. Taga, and K. Saito
Nano Lett. 2009, 9,122-125. Link

Abstract1

2-フェニル-1,3,4-オキサジアゾールの環状四量体(マクロサイクル)を合成し自己組織化を調査した。組織化によってマクロサイクルは一次元方向に積み重なりカラム状構造を形成したこのカラムは超分子ナノチューブとして機能し溶媒に含まれる水を取り込みながら成長したこの結果超分子ナノチューブの中に水の一次元鎖が形成されたマクロサイクルと水との相互作用は弱いと推測され一次元構造をもつ新たな水を発見した

ホウ素化合物

“Synthesis and Properties of BF2 Complexes to Dihydroxydiones of Tetracene and Perylene: Novel Electron Acceptors Showing n-Type Semiconducting Behavior”
K. Ono, H. Yamaguchi, K. Taga, K. Saito, J. Nishida, and Y. Yamashita
Org. Lett. 2009, 11, 149-152. Link

Abstract11

テトラセンやペリレンにBF2キレートを導入しホウ素元素を利用した機能化を調査したこれらの分子では二つのキレート部位によって四極子構造の寄与が強くなり芳香族環に正電荷が非局在化するこうした構造を反映して強力な電子アクセプタ性が観測されたこれらを有機電界効果トランジスタの半導体層に使用したところn型半導体特性が観測された芳香族炭化水素の機能化においてホウ素元素の有効性を示す知見が得られた