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小野研究室の論文がChemistry – An Asian Journal誌のCover Featureに選ばれました。

研究論文「Difluoroboron Chelation to Quinacridonequinone: A Synthetic Method for Air-Sensitive 6,13-Dihydroxyquinacridone via Boron Complexes」が高く評価され、Chemistry – An Asian Journal 誌のCover Featureに選ばれました。

キナクリドン類は鮮明な色と耐久性を兼ね備えた高性能の赤色合成顔料であり、自動車の塗装・印刷インキ・プラスチックの着色などに用いられています。近年では、太陽電池・有機EL材料などの有機エレクトロニクス分野に向けて活発に研究が行われています。一方、当研究室ではホウ素錯体を用いて有機機能性材料の研究開発を行っています。本研究では新たな合成顔料を開発する目的でキナクリドンキノン(QQ)へのホウ素錯体(BF2)導入反応を調査しました。その結果、生成した濃緑色物質は当初予想したQQ-BF2ではなく、それが2電子還元された6,13−ジヒドロキシキナクリドン(QA-OH)のBF2錯体(QA-BF2)であることを発見しました。実は、2電子がどこから注入されたか未だに分かりません。Cover Pictureの「From Where?」はそれを指しています。また、QA-BF2の加水分解によって濃紺色のQA-OHが生成し、さらに空気酸化によって黄色のQQが再生しました。これにより、ホウ素錯体を介してQQからQA-OHに変換する新しい合成経路の開発に成功しました。本研究成果は、新規顔料だけでなく還元剤や酸素センサーの開発へ応用が期待されます。

<掲載論文>  Chemistry – An Asian Journal
<掲載内容>  Cover Feature

 

小野研究室の論文がChemistry—An Asian Journal誌に発表されました。本研究は、主に森谷晃一朗君の修士論文をまとめたものです。

論文タイトル:Difluoroboron Chelation to Quinacridonequinone: A Synthetic Method for Air-Sensitive 6,13-Dihydroxyquinacridone via Boron Complexes
論文ページ:https://doi.org/10.1002/asia.201900219

概要:キナクリドン誘導体は機能性色素材料として工業的に注目されている物質です。そこで、キナクリドンキノン(QQ)へのBF2キレート化を行いました。 得られた濃緑色の固体は、6,13−ジヒドロキシキナクリドン(QA-OH)のBF2錯体であり、そしてQA-BF2 であると決定されました。 この化合物をアルゴン中で加水分解して濃紫色の固体としてQA-OHが得られました。 さらに、QA-OHは空気酸化またはベンゾキノンの存在下でQQに変換されました。 本研究では、BF 2錯体を経由するQQからQA-OHへの新しい合成法を見出しました。

土川将宏君と高尾綾さんの修士論文をまとめた研究論文がRSC Advancesに発表されました。このジャーナルはオープンアクセスなので、どなたでもダウンロードサイトから入手できます。

論文タイトル:Multifunctional organic dyes: anion-sensing and light-harvesting properties of curcumin boron complexes
著者:M. Tsuchikawa, A. Takao, T. Funaki, H. Sugihara, and K. Ono
共同研究機関:産業技術総合研究所
ジャーナル:RSC Advances Link

まこの研究は創造工学教育課程の研究室ローテーションで行われている実習内容のもとになっています。ご興味のある皆さんは是非アクセスしてください。